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名古屋入管殺人事件?|日本の正義の形

スリランカ人女性ウィシュマさん死亡は政府自らが事件を隠蔽する不可解なもの。

事件の全容も把握される前に上川法相がいきなり適正な対応と表明してしまった。正義の番人が真実を知る前に隠蔽に足を踏み出してしまった。国益が何処にあるか。



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https://www.fnn.jp/articles/-/227545

 

【独自】「“床が寒い”と訴えても職員は跨いで出て行った」ウィシュマさん映像の全容判明
取材部

【独自】「“床が寒い”と訴えても職員は跨いで出て行った」ウィシュマさん映像の全容判明

鈴木款
鈴木款
国内

ウィシュマさんの映像の全容

名古屋入管に収容中死亡したスリランカ人女性のウィシュマさんの問題について、遺族にのみ開示された監視カメラの映像の全容がわかった。そこに映し出されていたのは、日々衰弱しながらも生きようとしたウィシュマさんの姿と入管職員の人権を蹂躙する非人道的な行為だった。ともに映像を見た従姉妹に映像の詳細を時系列で聞いた。

殺風景な倉庫のような部屋で映像は開示された

ウィシュマさんの従姉妹のマンジャリさんは映像を遺族と見た
この記事の画像(7枚)

従姉妹のマンジャリさんによると、遺族が映像を見せられたのは法務省内の殺風景な倉庫のような部屋だった。正面には大きなプロジェクター画面があり、入管側からは佐々木聖子入管庁長官、丸山秀治出入国管理部長のほか、職員、通訳など計8人、遺族側はワヨミさん、ポールニマさんとワヨミさんの夫、マンジャリさんと通訳の5人だった。全員がパイプ椅子に座った。

マンジャリさんの話をもとに筆者が描いた映像開示時の部屋の様子

プロジェクター画面は大きかったものの、映像は円形で小さかったとマンジャリさんはいう。

「映像は天井にある監視カメラ1つのもので、音声ははっきり聞こえるが、映像は体の動きがわかるくらいで顔の表情までははっきりわからなかった」

部屋にはベッドが1つあるだけで、ベッドと壁の間は人がやっと通れるくらいの狭さだ。出入り口を入ると右側にベッドがあり、奥にトイレと洗面器・鏡がある(プライバシー保護のため映像にはモザイクがかかっている)。丸い映像の下半分は壁が映っているので、映像は実質半円のかたちだ。

マンジャリさんの話をもとに筆者が描いた映像に映る部屋の様子
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「あーあー」と大きなうなり声をあげていた

映像は日付入りで、日付が変わるたびに職員・通訳から映像の説明があった。

最初の映像は2月22日午前9時21分から37分の16分間。ウィシュマさんの服装は白っぽいフード付きのジャージとスエットパンツで、頭にはフードを被っていた(ほぼいつも同じ服装)。

映像の冒頭ウィシュマさんはベッドの上で左右に寝がえりを打ちながら、1人で「あーあー」と大きなうなり声をあげていた。そこに収容者の友人が訪れると、ウィシュマさんは声を出すのを止め、その友人が歯磨き粉をつけた歯ブラシで、ウィシュマさんはベッドに腰かけ壁にもたれかかりながら、バケツを抱えて弱々しく歯磨きを始めた。

映像の冒頭でウィシュマさんは大きなうなり声を上げていた

「セーライン(点滴)」と身振りを入れながら4回言う

2月23日午後7時37分から39分の2分間。

女性職員2人(※)が部屋にいて、ウィシュマさんは壁にもたれかかりながらベッドに座っている。映像は職員の「違うことを考えて」という言葉で始まる。職員の顔にはモザイクがかかっており誰かはわからない。ウィシュマさんは「病院に連れて行って」と訴えるが、職員は「私たちはずっとみているからね」と肩をトントンと叩く。

(※)ウィシュマさんの担当職員は映像中ずっと女性。

そして職員が部屋を出ようとするとウィシュマさんは「行かないで」と言い、職員は「大丈夫、私たちがいるから」と返す。さらにウィシュマさんが「セーライン(シンハラ語で点滴)」と身振りを入れながら4回言うが、職員は「セーラインって何?」「いまお医者さんがいないから私たちはわからない。お医者さんしかできない」と返す。

そこでウィシュマさんが「ボスを呼んで」と言うと「ボスは休み」と職員が言って映像は終わる。

その映像が終わるとワヨミさんは、「入管職員が言った“違うことを考えて”はどういう意味なのか?この前の映像を見たい」と入管側に詰め寄った。これに対して職員は「今日は用意していないから今度見せる」と伝えて会話はいったん終わった。

妹のワヨミさん(左)は「この前の映像を見たい」と入管側に詰め寄った。右は妹のポールニマさん

「ウィシュマさんが立った映像は一度も見ていない」

2月24日午前11時13分から19分の6分間。

収容者の友人が仮放免になるため別れの挨拶にやってきた。顔にはモザイクが入っている。友人はウィシュマさんの頭や肩をマッサージしたり、抱きしめてキスをしたりしながら「私はここを出るけどあなたも頑張って出てね。ちゃんとご飯を食べてね」と語った。

ウィシュマさんの返事はか細くほとんど言葉が聞き取れない。壁にずっともたれかかりベッドに座ったままだ。

マンジャリさんは「私たちはウィシュマさんが立った映像を一度も見ていない。座っている態勢を見ても、脚には力が入っていない感じだった」と語った。

「担当さん、転んだ」と助けを呼ぶが誰も来ない

2月26日午前5時14分から36分の22分間。

ウィシュマさんはベッド上で「あーあー」とうなり声をあげながら寝がえりを打つとベッドから転落した。ウィシュマさんは「担当さん、転んだ」と叫ぶと、職員の面倒くさそうな「わかった」「自分でやって」という声だけが聞こえる。部屋には誰も来ない。

その後ウィシュマさんはベッドに手をかけ起き上がろうとするができず、「担当さん」と24回助けを呼ぶ。ウィシュマさんはベッドにあった毛布を手繰り寄せて自分にかけたところで、職員2人が部屋に入ってきて「昨日の夜みたいになるよ」と言った。

ウィシュマさんはベッドから転落し「担当さん」と24回助けを呼んだ(マンジャリさん作画)

ここでワヨミさんたちは映像を止めさせ、「昨日の夜は何があったのか」と職員に尋ねたが「今度見せる」との回答だった。

支援者によると前夜の25日夜トイレに行こうとしたウィシュマさんは、助けを求めたが誰も来ず、自力で這いつくばって行こうとして頭と手に怪我をしたという。

「床が寒い」と訴えるウィシュマさんを跨いで出て行く

職員2人はウィシュマさんをベッドに戻そうとするが、腰を持ったり服を引っ張るだけで「助ける振りとしか見えなかった」(マンジャリさん)。ウィシュマさんがベッドにもたれて床に座ると、「あなたは私たち2人じゃ重くて無理。大きい声出さないでね。ほかの人に迷惑をかけるから。朝まで頑張ってね」と話し、ウィシュマさんが「担当さん、床が寒い」と訴えると職員は毛布をかけてウィシュマさんの足を跨いで部屋を出ていった。

2月27日午前10時16分から17分の1分間。

ウィシュマさんは車いすに座っている。シャワーに行く前との説明があり、11時4分にシャワーから帰ってきたと職員から説明されて映像は終わる。ウィシュマさんは車いすに座ったままで、車いすを押している職員にはモザイクがかかっている。

ワヨミさんはこの映像を見て「姉が自分で車いすに乗ったのか、誰が乗せたのか」と聞いたが、職員は「いまは映像がないので今度見せる」と答えた。

(関連記事:ウィシュマさん妹「ここには人道がない」…なぜ入管施設では悲劇が繰り返されるのか

#2後編に続く

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

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https://www.fnn.jp/articles/-/227546

 

【独自】「“鼻から牛乳”は日本のジョークです」ウィシュマさん映像の全容判明
取材部

【独自】「“鼻から牛乳”は日本のジョークです」ウィシュマさん映像の全容判明

鈴木款
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国内

ウィシュマさんの映像の全容

名古屋入管に収容中死亡したスリランカ人女性のウィシュマさんの問題について、遺族にのみ開示された監視カメラの映像の全容がわかった。そこに映し出されていたのは、日々衰弱しながらも生きようとしたウィシュマさんの姿と入管職員の人権を蹂躙する非人道的な行為だった。ともに映像を見た従姉妹マンジャリさんに映像の詳細を時系列で聞いた。
(前編=【独自】「“床が寒い”と訴えても職員は跨いで出て行った」ウィシュマさん映像の全容判明、から続く)

映像を見た従姉妹のマンジャリさんがその詳細を語ってくれた
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「“鼻から牛乳”は日本のジョークです」と職員が説明

3月1日午後9時32分から37分の5分間。

職員2人が部屋にいてベッドに座っているウィシュマさんに薬を渡す。「喉の奥まで薬を入れてね」と職員が言うが、ウィシュマさんは水を飲んだら嘔吐してしまう。そのあとウィシュマさんが「コーヒー」と言って、職員が紙パックのカフェオレを渡す。職員がウィシュマさんの嘔吐のあとを拭こうとすると、ウィシュマさんがカフェオレを吹き出し、それを見た職員が「鼻から牛乳や」と言って笑った。ウィシュマさんは「コーヒーだけ飲める」と語って映像は終わった。

この映像を見ながら入管庁の職員は「これは日本のジョークです。ウィシュマさんと仲良くするための」と遺族らに説明した。これに対してポールニマさんが怒り「こういう状況で冗談を言うのか」と言うと職員は黙り込んだ。この頃になるとワヨミさんはずっと泣いていた。

「ウィシュマさんに職員が”鼻から牛乳や”と笑った」(マンジャリさん作画)

「痛い」と訴えても「しょうがない」と嘲る職員

3月2日午後6時45分から47分の2分間。

ベッドに寝ているウィシュマさんを職員が動かそうとして、服や手を引っ張るとウィシュマさんは大声で「痛い」と訴える。職員は「自分で身体を動かさないから、痛いのはしょうがない」「食べて寝るだけだから身体が重くなる」と嘲るように言う。なぜ身体を動かそうとしたのか説明はない。

3月3日午後4時58分から5時10分の12分間。

部屋には職員1人と白衣を着た看護師がいる。ウィシュマさんはベッドに寝ていて、「まるで遺体のように動かない」(マンジャリさん)。看護師は体温と血圧を測り、いろいろ話しながらウィシュマさんの手のマッサージをする。

看護師はウィシュマさんに手を握ったり広げたりするように言うが、ウィシュマさんは出来ない。さらに看護師はウィシュマさんの腕を上げ下げするが、大きな声で痛がる。

ウィシュマさんは大きな声で痛がったが看護師は腕の上げ下げを続けた

「本当に看護師なのか」と遺族は訝しがった

看護師は「明日先生に会うから症状を全部言うように。ご飯を食べられない、歩けない、耳鳴りがする、頭の中が工場みたい(幻覚をみる)」と言うと、ウィシュマさんは「死にたい」と言う。看護師は「日本人の金持ちの恋人を探して結婚して幸せになるんじゃないの」と言う。

そのあとも看護師は4、5回「明日先生に症状を言うように」と繰り返した。ウィシュマさんが「目も見えない」というと「それも言ってね」というだけだった。

この映像を見ながらワヨミさんの夫が「この人は本当に看護師なのか。こんなに衰弱している人になぜ腕を上げ下げさせるのか」と訝しがった。

ウィシュマさんはベッドから転落し「担当さん」と24回助けを呼んだ(マンジャリさん作画)

これに対して佐々木聖子入管庁長官は「この人は週5回入管に来る看護師だ」と答えた。

この後「時間もかかったので休憩しましょう」となり、遺族は休憩室に移ったがワヨミさんが大声で泣きだし嘔吐した。そこで「これ以上映像を見るのはやめよう」と、代理人の指宿昭一弁護士と相談して、映像を続けてみることを中止した。

これが12日遺族に開示された映像の全容とその日の遺族の姿だ。

映像を見た後ワヨミさんは記者団の前で「お姉さんは犬のような扱いを受けた」と泣きながら訴えた

黒塗りの1万5千枚の文書が意味するものは

最後の映像から3日後、ウィシュマさんは死亡した。入管庁の公開した最終報告書には、死因の特定は困難だとしている。

遺族の代理人の弁護士団は、収容中の状況をさらに詳しく調べるため名古屋入管に対して行政文書の開示請求を行った。

しかし名古屋入管から送られてきたのはほぼ黒塗りの約1万5千枚の文書だった。

名古屋入管から送られてきた黒塗りの文書1万5千枚と遺族代理人の駒井知絵氏(左)と指宿昭一氏(中央)

筆者はこれまでの取材を振り返りながら、入管庁や名古屋入管の職員はなぜ人命を蔑ろにし、人の尊厳を踏みにじる行為を平気で行えるようになったのだろうと考えた。

遺族の代理人の1人である駒井知会弁護士はこう語る。

「東京入管に朝行くと、割とお洒落な服を着た沢山の若者たちが奥の入口に吸い込まれていくのを見ます。若者たちは建物の職員控え室で入管の紺の制服に着替えるのでしょう。若い彼ら、彼女らが誇りを持って職場に向かえる日が来るためにも私たちは戦いたいです」

すべての映像を公開し入管制度の国民的議論を

いまの入管制度と組織が変わらない限り、ウィシュマさんのような悲劇は必ず繰り返されるだろう。そしてこの人権を無視し、非人道的な行為に加担させられるのは日本の前途ある若者なのだ。

国連も問題視する非人道的な入管制度が抜本から変わらぬ限り、日本という国に未来はこない。

まずはウィシュマさんのすべての映像を公開し、国民1人1人が入管施設の現実を直視したうえで議論を始めるべきだ。

映像の公開が無い限り、政府は人権を軽視し国民から真実を隠そうとしていると言わざるを得ない。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

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https://www.fnn.jp/articles/-/237989

 

【独自】「長官の発言は”脅し”だった」代理人のメモとメールが語る入管庁の嘘と傲慢 ウィシュマさん遺族が映像視聴を見送った理由

【独自】「長官の発言は”脅し”だった」代理人のメモとメールが語る入管庁の嘘と傲慢 ウィシュマさん遺族が映像視聴を見送った理由

鈴木款
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国内

名古屋入管でウィシュマさん死亡

名古屋入管に収容中亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん。

遺族らは10日、再び監視カメラ映像を視聴するため出入国管理庁(以下入管庁)を訪れたが、代理人弁護士の同席を断られこの日の視聴を見送った。入管庁は「開示は法律上の義務ではなく人道的配慮として遺族にのみ行う」との主張を譲らないままだ。

(関連記事:【独自】「“床が寒い”と訴えても職員は跨いで出て行った」ウィシュマさん映像の全容判明

(関連記事:【独自】「“鼻から牛乳”は日本のジョークです」ウィシュマさん映像の全容判明

ワヨミさん「代理人立ち会いを拒否するのはおかしい」

「代理人が立ち会って映像を見るのが私たちにとって大切なことで、拒否されるのはおかしいし、入管庁の対応はあまりにも酷い」

ウィシュマさんの妹のワヨミさんは、視聴を見送った理由を記者団に対してこう語った。

ワヨミさん「代理人が立ち会って映像を見るのが私たちにとって大切なこと」
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ウィシュマさんが死亡するまでの13日間の監視カメラ映像は、約2時間に編集され先月12日に遺族らに開示された。しかし「ウィシュマさんを犬のように扱っていた」(ワヨミさん)映像に遺族が耐えられず、体調を崩したため視聴は中断されていた。

そして約1カ月たった10日、再び遺族らに映像が開示される予定だったが、入管庁が代理人弁護士の同席を認めなかったため遺族側が反発し視聴は見送られた。

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代理人弁護士のメモが語る入管庁職員の発言

遺族の代理人弁護士のメモによると、当日入管庁職員はまず遺族側に対して、遺族の体調変化への対応のため別室に看護師や臨床心理士を待機させていると伝えた。

その際に職員が「体調判断は入管側で行う」と伝えてきたため、代理人弁護士の1人である指宿昭一氏は「体調の判断や場合によっては視聴をとめるなどは代理人弁護士の役割であって、代理人弁護士の立ち会いを求める」とあらためて主張した。

指宿昭一弁護士(右)「代理人弁護士の立ち会いを求める」。右から2人目は妹ポールニマさん

しかし職員からは「代理人の方々にご覧頂くことは考えていません」との返答があったので、指宿氏が「理由は説明できないのですか?」と尋ねると職員はこう答えた。

「理由についても説明しているかと思いますが、ビデオ映像については不開示情報とこちらは認識しております。これらについて御遺族には人道上の特別の対応からお見せするので、それら以外の方々、代理人も含めてご覧頂くことは考えておりません」

入管庁職員「遺族に直接確認していいか?」

ここで指宿氏は「人道上の配慮であれば弁護士も同席させるという考えにはならなかったのですか?」と食い下がったが、職員は「前回よりできる限り対応させて頂いております」と答えが変わらなかったので、指宿氏は「遺族の意思として今日は見られないので帰ります」と視聴の見送りを告げた。

すると職員が「遺族に直接確認していいか?」と聞いてきたので指宿氏が同意すると、職員は遺族に“交渉”を始めた。

「本日我々は弁護士の方々の立ち会いを認めることは考えていません。その上で皆さま限りであれば、ビデオを見てもらう準備があります。前回ワヨミさんとポールニマさんが体調を崩されたと聞いています。今回は別部屋に看護師と准看護師1名、カウンセラーがいて、もし皆さまに多少なり体調に変化があった場合には、対応できるよう準備をしています。代理人の立ち会いは認められませんが、我々としてはできる限りのことをさせて頂きました。それでも皆さまとしてはビデオをご覧頂くのは難しいでしょうか?」(入管庁職員)

従妹マンジャリさんが描いた映像上のウィシュマさん。この映像を見た後、遺族は嘔吐するなど体調不良を訴えた

ワヨミさん「弁護士が一緒でなければ見ません」

これに対してワヨミさんが「弁護士が一緒でなければ見ません」と断ったところ、職員は「なぜ弁護士がいないと見られないのか、その理由を教えてください」と食い下がった。

ワヨミさんが「弁護士さんがいなければ、見ても法的な意味もわからない」と答えると、職員は「代理人が立ち会うことで、心理的負担が減るということもあるのか?」と問い、ワヨミさんが「そうだ」と答えると、職員は「理由はそれだけですか?」とさらに食い下がった。

そこで指宿氏が「代理人を通さないで、これ以上聞くのはやめてください」と間に入ったところ、職員は「まず上司に報告します。我々としては今日初めて皆さまがそういうご意向だということを知りました」と主張した。

これに対し代理人弁護士団は「前から伝えてある。メールにも残っている。議論したくないので、とにかく終わりにしてください」と帰る意思を再度示した。

入管庁職員に代理人立ち会いを求めた8月27日のメール(指宿弁護士提供)

入管庁長官「次の機会を設けるのは難しいです」

ここで職員と代理人は「少し時間をください」「もう帰ります」と押し問答となり、職員が「佐々木(聖子)長官が長官室でご遺族や先生たちと直接話を聞きたい」と伝えてきた。

しかし代理人から「長官に会う必要がない」と断ると、佐々木長官が自らやってきてこう語った。

「法務省、入管として(代理人立ち会いは)難しいというのが結論です。そうしますと結局遺族が見ることができません。それでも皆さまは見られないという決断でよろしいのですか?そういうことであれば役所としては、もう次のこういう機会を設けるのは難しいです」

指宿氏はこの佐々木長官発言を「脅しだった」としてこう語った。

「入管庁は法律上の義務としての開示ではなく、遺族に対する特別の人道的配慮で第三者の立ち会いは認めないといいます。我々は何度もすべての映像のデータ開示を求めていますが、これは条理と社会通念に基づく請求で、入管庁が応じない法的根拠はありません」

ポールニマさん「すべての日本人に見てほしい」

また代理人弁護士の1人、高橋済氏はこう語る。

「仮に不開示情報にあたる場合でも、法律上は裁量開示というものがあり開示可能です。遺族には裁量開示して、代理人には裁量開示しないというならなぜそうなるのか理由を説明しなければいけません。裁量というブラックボックスで押し通せる話ではないと思います」

ポールニマさんはFNNの取材に対し、代理人を通して「すべての日本人に映像を見てほしい。そうすれば入管施設の中で収容者がどう扱われているかわかる」と訴えた。

ポールニマさん(右)「すべての日本人に映像を見てほしい」

代理人弁護士の駒井知会氏は「私たちが求めるのは、残っている映像全てのデータを御遺族に渡すことです」と強調する。

「そこから御遺族の許可を得たうえで、公開に踏み切れればと思っています。日本の全ての人たちが日本社会でいま何が起きているのか知って頂きたいと思います。そこから制度自体を皆で変えていくのが、ウィシュマさんの悲しい死を無駄にしないことだと信じるからです」

ウィシュマさんの問題は、日本が外国人の人権をどれだけ重視しているのかが試されている。そして遺族のため、入管制度を国民全体で考えるために映像公開は必要だ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

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https://www.fnn.jp/articles/-/243580


「次の総理は姉に正義を」名古屋入管で死亡したウィシュマさんの妹が失意の帰国
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「次の総理は姉に正義を」名古屋入管で死亡したウィシュマさんの妹が失意の帰国

日本は戦後賠償を放棄したスリランカへの感謝を忘れてはならない

鈴木款
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名古屋入管でウィシュマさん死亡

名古屋入管の施設で収容されていたスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが死亡した問題で、真相を求め来日していた妹のワヨミさんが23日帰国の途についた。5月1日の来日以来、監視カメラ映像の公開などウィシュマさんの死の真相解明を求めてきたが、入管が聞き入れることはなく、体調不良と失意の中での帰国だった。

「入管職員だけは人として理解できなかった」

「今回一時的に帰国しますが、(映像公開や真相解明を)決して諦めたわけではありませんので、これからも姉の正義のために一緒に闘ってください。協力してくれた皆さんに感謝します」

ウィシュマさんの妹ワヨミさんは23日、母国スリランカに帰国する際、成田空港で記者団にこう語った。

一部の映像で見たウィシュマさんがベッドから転落し「担当さん」と24回助けを呼んだ時の様子(マンジャリさん作画)
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代理人によるとワヨミさんは入管からの惨い対応に精神的に傷つき、これ以上日本に滞在し続けることができなくなったという。ワヨミさんは入管に対する気持ちをこう続けた。

「入管に責任を受け止めてほしい。日本で様々な人達と会いましたがいい人ばかりでした。しかし入管にいる職員たちだけは、人としてどうなのかと。理解できませんでした」

ワヨミさん(左から2人目)「入管の職員は理解できなかった」

戦後スリランカは日本への賠償請求を放棄

ウィシュマさんの遺骨はいま、岐阜県愛西市にある明通寺に眠っている。スリランカ仏教徒と交流があったことから明通寺に納骨されることになった。

この寺にはスリランカの故ジャヤワルダナ元大統領の顕彰祈念碑があり、その説明書きにはスリランカと日本の戦後の歴史が綴られている。

ウィシュマさんが眠る岐阜県の明通寺(写真提供:ウィシュマさん遺族弁護団)

第2次世界大戦が終わり1951年のサンフランシスコ講和会議では、戦勝国が集まって日本への賠償請求や領土問題が話し合われた。

スリランカ(当時セイロン)から出席したジャヤワルダナ氏は、「憎悪は憎悪によって止むことなく愛によって止む」という仏陀の言葉を引用し、スリランカが日本に対する賠償請求権を放棄すると明らかにしたうえで、日本を国際社会に受け入れるよう訴えた。

「スリランカが小国だから入管はこんな扱いを」

この演説は日本に厳しい制裁処置を求めていた一部戦勝国を動かし、日本は巨額の賠償と旧ソ連らが主張していた分割統治を免れたと言われている。日本の戦後復興と高度成長、そしていまの日本の国としての姿があるのはスリランカのおかげだったのだ。

明通寺にある祈念碑(写真提供:ウィシュマさん遺族弁護団)

ワヨミさんが「スリランカが小国だから入管はこんな扱いをするのか」と憤ったことがあった。入管が行っていることは国連からも非人道的で人権侵害と断定されているものであり、国対国の論理を差し挟むのは適当ではない。

しかし歴史を考えれば、日本はスリランカへ常に感謝の念を忘れてはならず、スリランカ国民であるウィシュマさんと遺族にしてきたことは、国として恥ずべき恩知らずな行為だったのではないか。

入管局長は「職員は外交官たれ」と言った

1954年の国会で入国管理局長(当時)は、議員から入管での外国人の取り扱いについて聞かれこんな趣旨の答弁をしている。

「入国管理局が対象としている外国人は、その取り扱いを誤れば直ちに外交関係に影響がある。だから常に同僚並びに部下に対して『第一線の外交官たれ』というモットーを徹底させている。ややもすれば権力を持つ者として弱者の扱いをしがちだが、そういうことはしてはならない。施設は刑務所でも、犯罪人を扱うところでもない。単に帰国する人たちの船待ちの場である」

この答弁は長崎にある大村収容所(当時)=現大村入管センターについてのものである。大村入管は当時、主に日本から韓国への強制退去者を一時収容する施設であった。国会で入管のトップは「入管職員は収容者に外交官として向き合い、不当な権力を行使してはいけない。収容所は刑務所ではなく、一時的な収容の場である」と入管の理念を示した。

しかし大村入管では2019年、収容されていたナイジェリア人男性が餓死している。果たして入管の後輩達は、先達の言葉をどう受け止めたのだろうか。

代理人に宛てた手紙には日本語で「どうもありがとうございます」と書かれていた

「次の総理は姉に正義と再発防止の法律を」

いま自民党総裁選のまっただ中であり、この選挙で日本の新しい首相が実質的に選ばれる。

ワヨミさんは“次の総理”に向けてこう語った。

「私が言いたいのは姉に正義を行って欲しいことです。そして他の外国人にこうしたことが二度と起きないように法律をつくって欲しいです」

新しいリーダーのもと、日本は真の人権国家であると国際社会に言える日が来るのか。入管職員が「外交官」となり収容施設が刑務所でなくなるためにも、入管制度の見直しとウィシュマさんの死の真相解明、そしてビデオ映像の公開が必要だ。

遺族の無念をはらすためにもビデオ映像の公開が必要だ

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】


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