『東芝粉飾事件の調査報告書にも疑惑が残る?』
東芝粉飾決済事件に関する面白い記事が見つかった。調査報告への疑惑を追及するものだ。しかし、身内で作った調査報告に多くを期待する方が無理だ。公的な機関が出てきても大企業である東芝の都合に遠慮が入って似たような結果になるかもしれない。
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- 久保利弁護士
- 東芝粉飾調査報告書
- 東芝は恥ずかしくないのかな。経営者が愚かならスタッフも愚かなようだ。今までと何も変わらない。上場廃止とかのお灸をすえる必要があるのではないか。アベノミクスにひた走る自民党が裏で手をまわしているからこのような傲慢がまかり通っているのかもしれない。腐ったリンゴを放り出せ!さもないと全部腐ってしまうぞ!。
http://blogos.com/article/146647/
ロイター
2015年11月26日 11:25
東芝の第三者委報告書、格付け委が低評価 事実認定など欠落と指摘
[東京 26日 ロイター] - 第三者委員会報告書格付け委員会(格付け委:久保利英明委員長)は26日、東芝<6502.T>の不正会計に関する第三者委員会(委員長:上田広一元東京高検検事長)の調査結果を発表した。委員8人のうち、4人が「C」、1人が「D」、3人が「F」と、総じて低い評価だった。
格付け委は、不祥事を起こした企業が問題調査のために設置した第三者委の発行する調査報告書を格付けする独立機関。最高評価の「A」から「D」と「F」(不合格)の5段階で評価する。
調査結果は、東芝の第三者委が調査の範囲を自ら設定せず、同社からの委嘱事項に限定したほか、「調査は東芝のためだけに行われた」としている点を問題視。不正会計に関与した歴代3人の経営者の動機に関する事実認定と評価が欠落しているとも指摘した。
東芝を担当する監査人、新日本監査法人を調査の対象にしなかったことについては、マイナス評価にした委員と、そうではない委員で見解が分かれた。
東芝の第三者委は7月、東芝の不正会計が歴代社長ら「経営トップの関与に基づき組織的に実行・継続された」と指摘し、過年度の税引き前利益が総額1562億円、過大に計上されていたと発表していた。
11月に発表された役員責任調査委員会(大内捷司委員長)の調査報告は、今回の格付けの対象になっていない。
格付け委は弁護士やコーポレートガバナンスの専門家らが昨年立ち上げ、これまでにみずほ銀行の反社会的組織関係者への融資に関する調査報告書など計8件を取り上げた。
格付け委の久保利弁護士は、東芝の報告書を「F」と評価。第三者委のメンバーに、委員会発足直前まで東芝のグループ会社との顧問契約を締結していた弁護士がいた点や、公認会計士の一人が東芝と取引関係のあった監査法人に2014年まで在籍していたことを指摘。「独立性に疑問がある」とした。
「D」と評価した竹内朗委員は、今回の問題の動機面・心情面を説き起こさずに「当期利益至上主義」や「目標必達のプレッシャー」などと「空疎な言葉を並べられても、原因分析として浅薄であり、不祥事の真因に切り込んだものとは評価できない」と述べた。
一連の問題を受け、東芝の株式は東証の特設注意市場銘柄に指定されている。内部管理体制を原則1年以内に改善しなければ、同社株は上場廃止になる。
(江本恵美)
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http://biz-journal.jp/2015/11/post_12534.html
2015.11.23
連載 連載
湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」
東芝粉飾、調査報告書に重大な疑惑 意図的に室町社長への追及せず、当事者は無罪放免
文=湯之上隆/微細加工研究所所長
【この記事のキーワード】半導体, 東芝, 粉飾
複雑な思いで見ている『下町ロケット』
毎週日曜日の夜9時からTBS系で、池井戸潤原作の連続テレビドラマ『下町ロケット』が放送されている。町工場の佃製作所が、大企業の帝国重工にロケットエンジンの部品を供給する痛快な物語である。番組を楽しむと同時に、毎度モノづくりについて深く考えさせられる。
しかし、スポンサーの1社が粉飾会計に揺れている東芝で、そのCMが流されるたびに虚しい思いがするのである。果たして東芝の黒い霧が晴れる日はくるのであろうか。あるいは、下町ロケットが最終回を迎えるまで東芝は東証1部上場を維持することができるのだろうか。筆者の不安は尽きない。
本稿では、11月9日に公表された役員責任調査委員会の報告書を検証する。そして、筆者の疑惑が、本当に粉飾に室町正志社長がかかわっていないのか、東芝の基幹事業であるNAND型フラッシュメモリに粉飾はなかったのか、の2点にあることを論じる。
納得できない役員責任報告書の結論
東芝は9月17日に、社外の弁護士3人で構成する役員責任調査委員会を設置し、2009年3月期から14年4~12月期に取締役や執行役員を務めていた98人について、粉飾会計にかかわっていたかどうかを調査した。
調査委員会は11月7日に報告書を東芝に提出し、東芝は同日、5ページの概要をホームページに公開した。また、11月9日に111ページからなる報告書の全文を公開した。その結論は以下の通りである。
(1)西田厚聡元社長、佐々木則夫元社長、田中久雄前社長、村岡富美雄元CFO(最高財務責任者)、久保誠元CFOの5人は、取締役として十分に注意して職務を遂行する「善管注意義務」を怠ったとして、計3億円の損害賠償を求める。
(2)第三者委員会の報告書で粉飾会計への関与が指摘された14人のうち、上記5人以外は、法的責任を認める証拠がないとして、訴訟の対象に含めない。
(3)調査した取締役や執行役員98人についても、証拠がないため、訴訟の対象に含めない。
(4)そして、現取締役社長の室町正志氏については、報告書の中に一切の言及がない。
これらの結論に対して、例えば11月10日付日本経済新聞は、損害賠償の対象を意図的に最小化していると批判している。筆者も同意見である。しかし、これに対して調査委員会は次のような見解を述べている。
(1)西田氏等5人は、ガバナンスに対する信頼を失墜させ、信用を著しく毀損した。
(2)5人の行為は市場の健全性を害する。看過されるべきではない。
(3)5人の行為は個人的利益を図ったものではない。
(4)回収可能性も勘案した額の一部を当面の請求とすることが相当。
(5)5人以外の調査対象者は法的責任を認めることができない。
筆者は、調査委員会の結論にも見解にもまるで納得できない。その理由を以下に述べる。
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12534_2.html
2015.11.23
連載 連載
湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」
東芝粉飾、調査報告書に重大な疑惑 意図的に室町社長への追及せず、当事者は無罪放免
文=湯之上隆/微細加工研究所所長
【この記事のキーワード】半導体, 東芝, 粉飾
たった3億円なのか、刑事事件ではないのか
この3億円の損害賠償を5人でどう分けるか不明だが、単純に割り算すれば、1人当たり6000万円である。約7年間で2248億円を粉飾していた損害賠償額としては、ゴミのような金額である。
調査委員会の見解(1)にあるように、この粉飾会計は東芝の信頼を失墜させ、信用を著しく毀損した。それだけでなく、その粉飾によって株価は不当な値付けがなされ、また銀行からの融資に対する与信判断にも大きな影響を与えたはずである。これは詐欺罪に当たるのではないか。だとすれば、民事ではなく、刑事事件として立件すべき問題ではないのか。
たとえ民事に限定しても、到底3億円で済むような話ではないだろう。見解(4)の回収可能性を考えたとしても、彼ら5人は辞任したのであり、懲戒解雇されたわけではない。したがって、相応の役員報酬や退職金を手に入れたはずである。少なくともその役員報酬および退職金の全額と、現在保有している資産のほとんどを差し出させるくらいの損害賠償額であってしかるべきだ。
5人以外は無罪放免か
調査委員会では、証拠がないため5人以外の法的責任を取ることができないと結論している。しかし、少なくとも第三者委員会の報告書では、粉飾会計に関わったのは14人いることになっている。それなのに、証拠がなく法的責任を問うことができないとはどういうことなのか。現時点で証拠が不十分なら、探し出すべきである。もっと徹底的に追求するべきである。安易に幕を引くべきではない。メンバーを変えて、第2次調査委員会を設置し、調査は続行すべきである。
なぜ室町社長への言及がないのか
この調査報告書のもっとも不可解な点は、室町社長への言及が一切ないことである。粉飾会計がまさに行われていた時に、室町氏は執行役専務(06年6月~)、取締役副社長(08年6月~)、常任顧問(12年6月~)、取締役(13年6月~)、取締役会長兼取締役会議長(14年6月~)などの要職にあった。
それなのに、調査報告書には名前すら出てこない。第三者委員会の報告書で名前が上がった14人や、対象となった取締役や執行役員98人のように、「調査したけれど証拠が見つからなかった」のではなく、調査すらしなかったとしか思えない。
前出日経新聞には、「室町社長が訴訟対象に入れば新体制下での経営再建に支障が出る。報告書は妥当な内容だ」という東芝幹部のコメントが掲載されているが、「バカなことを言うな」と言いたい。もし、調査委員会にそのような思惑があったのだとしたら、調査自体が無効である。
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12534_3.html
2015.11.23
連載 連載
湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」
東芝粉飾、調査報告書に重大な疑惑 意図的に室町社長への追及せず、当事者は無罪放免
文=湯之上隆/微細加工研究所所長
【この記事のキーワード】半導体, 東芝, 粉飾
室町社長は、田中前社長の辞任会見の時から、第三者委員会の報告書に自分の名前が一切出ていないことから、粉飾には一切「かかわっていない」と言い続けている。半導体出身のエキスパートである室町氏のこの発言を、筆者はまるで信用できない。「かかわっていない」のなら、そのことを証明すべきである。少なくとも調査委員会は、室町氏に対する調査を行うべきだ。
半導体の調査結果はたった3ページ
111ページからなる調査委員会の報告書全文を印刷して見ると、第三者委員会の報告書で粉飾の指摘があったインフラ工事、パソコン、テレビについては、どの役員にどのような法的責任があるかを詳しく記述している。ところが、半導体に関する調査結果は、111ページ中たった3ページしかないのである。そして驚くべきことに、次のように結論されている。
「半導体事業を所管するS&S社において行われた不適切な会計処理の概要は以下のとおりであるところ、同会計処理の問題点について第三者委員会報告書で言及されているものの、当時の執行役または取締役において、不適切な会計処理が行われていることを認識し、又は関与していたことを窺わせる資料を確認するに至らなかった。そのため、以下の案件については、執行役又は取締役の責任を肯定することはできない」
つまり、証拠不十分で、誰も責任追及しないということである。「そんな、バカな」としか言いようがない。本当に調査委員会は、調査を行ったのか。その報告内容がたった3ページというのは、どういうことか。こんな状態で、誰も納得できるはずがないだろう。
結局、NANDフラッシュへの疑惑は晴れない
筆者は、7月21日に第三者委員会の報告書が発表されたときから、NANDフラッシュも粉飾会計をやっていたのではないかという疑惑を持っている。その理由は、ディスクリートやシステムLSIは臨時の標準原価改訂を行ったときに利益のかさ上げをしていたが、NANDフラッシュを製造している四日市工場も、09年3月期から14年4~12月期の間に2回(11年度と12年度)、臨時の標準原価改訂を行っていたからである(表1)。
第三者委員会では、東芝の要請によって、半導体の調査対象をディスクリートとシステムLSIだけに限定した。そのため、NANDフラッシュで粉飾がなされたか否かは、現時点でも謎に包まれたままである。今回の役員責任調査委員会で、その謎が解明されることを期待したのだが、まったく甘かった。謎が解明されるどころか、より東芝に甘い調査結果を導き出していたからだ。
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12534_4.html
2015.11.23
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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」
東芝粉飾、調査報告書に重大な疑惑 意図的に室町社長への追及せず、当事者は無罪放免
文=湯之上隆/微細加工研究所所長
【この記事のキーワード】半導体, 東芝, 粉飾
東芝の半導体は、粉飾があったディスクリートとシステムLSIにおいても責任追及がなされず、NANDフラッシュについては調査すらも行われない。また、半導体出身の現社長の室町氏は、報告書に名前すら記載されない。こんな状態で、東芝が信頼回復などできるはずがない。
NANDフラッシュと室町社長は聖域なのか?
7月21日に公表された第三者委員会の報告書には、次のような記述がある。
「五 本委員会の調査方法等の概要と調査の前提
2 調査の前提
(5)本委員会の調査及び調査の結果は、東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われたものである。このため、本委員会の調査の結果は、第三者に依拠されることを予定しておらず、いかなる意味においても、本委員会は第三者に対して責任を負わない
(8)…(前略)…本委員会においては、東芝と合意した委嘱事項以外の事項については、本報告書に記載しているものを除き、いかなる調査も確認も行っていない」(本文ママ)
そして、11月9日に公表された役員責任調査委員会の報告書には、次の記述がある。
「1 本報告書の目的
本報告書は、株式会社東芝(以下『東芝』という。)において、東芝に関する2015年7月20日付株式会社東芝第三者委員会(以下「第三者委員会」という。)作成に係る調査報告書(以下『第三者委員会報告書』という。)で指摘された不適切な会計処理につき、東芝の取締役若しくは執行役の地位にある者又はその地位にあった者(以下『現旧役員ら』という。)の職務執行に関する法的責任の有無及び現旧役員らに対し損害賠償を請求すべきか否かについて調査し、これに関する東芝における検討・判断に供するために提出するものである」
(原文ママ)
以上から、第三者委員会では、「東芝のためだけに」調査を行うことが目的で、それゆえ調査は「東芝と合意した委嘱事項」に限定し、NAND型フラッシュメモリは東芝の意図によって調査から外されているのである。
そして、役員責任調査委員会では、「第三者委員会で指摘された不適切な会計処理」ついてのみ、それにかかわった現旧役員らの調査を行った。したがって、第三者委員会で調査対象となっていないNAND型フラッシュメモリの調査は一切行われないし、第三者委員会の報告書に名前の記載がなかった室町氏についても、調査はなされなかったということだ。
このように見てみると、NAND型フラッシュメモリと室町社長については、聖域として最初から調査から外されていたのではないかという疑惑を持たざるを得ない。
東芝は、第2次、第3次委員会を立ち上げてでも、粉飾に室町社長がかかわっていないのか、NANDフラッシュメモリに粉飾はなかったのかについて徹底的な調査を行い、その結果を公表するべきである。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
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