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『「餃子の王将」社長射殺事件』




『「餃子の王将」社長射殺事件』

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  • 犯人が逮捕されないまま1年が経過した中で興味深い記事を見つけた。なかなか面白い。核心は続報らしい。作品が既にあるなら手に入れて読んでみたいものだ。



http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41475

2014年12月20日(土) 一橋文哉
「餃子の王将」社長大東隆行氏はなぜ殺されたのか――迷宮入りと囁かれる事件の謎をジャーナリスト・一橋文哉が追った
『餃子の王将社長射殺事件』より
現代ノンフィクション

「餃子の王将」社長射殺事件・第1回
『早くも迷宮入り? 3・3・2・2の難事件』

 「餃子の王将」を全国展開する「王将サービス」の大東隆行社長(当時72歳)が2013年12月19日朝、京都市山科区の本社前で、何者かによって至近距離から立て続けに胸や腹に拳銃弾4発を撃ち込まれ殺されるという衝撃的な事件が起きて、1年が経つ。

京都府警は延べ約2万人の捜査員を投入したが、犯人の正体どころか、大東氏が殺害された理由さえ分からず、警察内部では早くも「迷宮入り(未解決)」の声が囁かれている。捜査はなぜ、進展しないのか。
3つの“不運”で躓いた初動捜査

王将事件は、府警にとって3つの“不運”が重なっていた。逆に犯人側からすれば、それを狙って計画した犯行とも考えられる。

まず、事件当日が寒くて真っ暗な冬の早朝、しかも雨天とあって目撃者がなく、毛髪などの細かい物証や足跡がほとんど流されてしまったことだ。2番目は、大東氏が自宅から車を運転して一番乗りで出勤し会社周辺を清掃することを日課としていて、犯人が下見や待ち伏せなど十分に準備できた点である。そして最後は、「開かれた会社」をウリにする「王将」が本社敷地内に防犯カメラを1台も設置しておらず、警備員も配置していなかった現状である。

実際、府警は「王将」本社の道路を挟んで向かい側にある別の梱包会社の防犯カメラに映っていた犯人らしき人影と走り去る車両の画像をもとに、周辺の防犯カメラやNシステム(車両ナンバー自動読取装置)の画像を繋いで懸命に犯人を追跡したが見失い、犯人は闇の中に消えてしまった。かくして初動捜査は失敗に終わった。

王将事件は車内などに現金百数十万円が手つかずのまま残され、カネを奪う目的とは思えなかった。府警は早くから、冷静に拳銃を4発連射して全弾を致命傷となる部位に命中させた手口などから、「何者かに雇われたプロの殺し屋」の仕業と睨んでいた。

ところが、そうした見方と矛盾する3つの謎が現場に残され、捜査を迷走させたのである。
3つの謎に震え上がった「王将」

第1の謎は、凶器の拳銃が日本の警察官が使用し、暴力団のヒットマンなどもよく使っている38口径回転式ではなく、25口径自動式であったことだ。小型の25口径は持ち運びに便利で、発射時の反動が小さいから非力な人間でも使いやすい。反面、殺傷能力や命中率は低くなる。また、自動式は連射には向いているが、装弾不良などのトラブルが多く、プロの殺し屋はもとより、暴力団のヒットマンもまず使わない。彼らも命懸けだから、いざと言う時に故障したり相手に致命傷を与えられない武器は使いたくないのだ。

第2の謎は、弾丸を撃ち込んだ部位である。殺し屋は短時間で確実に致命傷を与えるため、1発目は頭部に撃ち込むケースが多い。94年の住友銀行(現・三井住友銀行)名古屋支店長射殺事件でも、犯人は38口径回転式拳銃で至近距離から1発で眉間を撃ち抜いており、凄腕の殺し屋ほど1発で仕留める傾向が強いのだ。

だが、王将事件の犯人は最初に頭部を狙わずに4発も連射、まだ弾倉に弾丸が残っていたはずなのにトドメを刺していない。現に、大東氏は銃撃されてから15分ほどは生存していたと見られ、第一発見者に犯人の人着(年齢や体格、服装などの特徴)や犯行の様子をしゃべられる危険性があった。



さらに鑑識捜査の結果、弾丸が“すぐ死なないように細工”されていたことが判明。殺し屋に犯行を指示した黒幕的人物の強い恨みを感じさせる証拠が出てきたのだ。詳細は11月28日に上梓した拙著『餃子の王将社長射殺事件』(角川書店)をお読み頂きたいが、事件の背後に、何やらドロドロとした不穏な空気が漂い始め、あまりの不気味さに脅え、「王将」側は震え上がった。

それが端的に示されたのが、3番目の謎であった。犯人はなぜ、「王将」本社前で社長を殺害したのか、ということである。

大東氏は社長に就任後も連日、店舗を巡って激励や指導に当たっていたし、一人で自転車に乗って会社や自宅などの周辺を“散歩”することも多かった。いくら早朝とはいえ、出勤する従業員もいる本社前より、もっと狙いやすい場所はいくらでもあったはずだ。

しかも、人間が車を乗り降りする時は足元に気を取られ、どうしても周囲への注意力が散漫になる。暗殺者とすれば標的が車を降りようとする時に銃撃すれば、相手は身動きできず確実に殺害できるのに、わざわざ車外に出た社長を正面から連射している。

これはいったい、何を意味するものか。

「社長は真正面から1発食らった後、地べたに倒れ込むまで続けて3発撃ち込まれとる。そりゃ、ショックやで。夜が明けきらん暗闇の中、自社の前で誰にも発見されず、身体からどんどん血が噴き出し周囲に血溜まりが広がるのを感じながら、たった一人で息絶えていくんやからな。これは犯人の怨念というより処刑やないか」

企業を標的とした事件に詳しい大阪府警刑事は、そう明かす。
2つの“二重構造”がもたらす真実

ところが、府警がいくら大東氏個人に対する恨みや会社経営上のトラブルなどを調べても、細々とした問題はいろいろと出てくるものの、殺害に至るほどの動機が浮上して来ないのである。

バブル経済が崩壊した90年代以降の未解決事件を調べると、犯行動機を持つ黒幕的人物が報酬を支払って、殺人や強盗などを実際に行う実行犯を雇うケースが増えていることが分かる。未解決事件で犯人が捕まっていないので断定はできないが、世田谷4人惨殺事件も、八王子スーパー3人射殺事件も、そうした特徴が窺える。いわゆる「二重構造事件」で、犯行動機がなかなか分かりにくい。

王将事件は、そこにもう1つの「二重構造」が隠されているのではないかという気がしてならない。つまり、犯人にとって真の標的は大東氏ではなかったのではないか、ということである。

私は、「かい人面相」を名乗る犯人が大手食品・製菓六社を脅迫し、スーパーなどに青酸混入菓子を置いて世間と業界をパニックに陥れたグリコ・森永事件や、「赤報隊」と称する犯人が散弾銃で記者二人を殺傷した朝日新聞阪神支局襲撃事件、前出の住友銀行名古屋支店長射殺事件など、企業が絡んだ数多くの未解決事件を取材してきた。どの事件も、背後に政財界の大物や闇社会のドンの影がチラつき、莫大な利権をめぐる黒い欲望が漲る権力闘争やさまざまな怨念が絡み合い、誰が真犯人で、どれが真の犯行動機か分からないという大がかりで、複雑怪奇な犯罪ばかりであった。

王将事件は、登場人物や犯行動機にそれほど広がりや深みがあると思えないし、発生から一年(他の事件は時効近くに執筆)なのになぜ書いたのか と言うと、この不気味なダブル「二重構造」に魅かれ注目したからである。次回、事件の真相に迫る。

<以下、第2回へ続く>

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